壁は、思っているより薄いかもしれない

お盆休みが終わり、8月も後半に入る。
猛暑はいくぶん和らいではいるものの、傘が手放せない毎日が続いている。それでも、強烈な日差しとうだるような暑さが続かないだけで、ずいぶん過ごしやすく感じる。
このところ、コーチングスクールを卒業し、その後も学びを続けながら、ICFのACCを目指している方々のお話を聴く機会が、偶然にも重なっている。
皆さん、それぞれに頑張っている。
けれど、少し壁にぶつかり、弱気になっている様子も感じられる。
スクールに通っている間は、講義もあり、セッションを実践する機会もプログラムの中に組み込まれている。
卒業という一つの目標もあり、学び続ける環境が用意されている。
しかし、卒業後は少し違う。
クライアントを獲得する。今の仕事にコーチングを活かす。さらにスキルを高める。自分に必要な学びを選ぶ。
そこからは、自分で考え、選び、行動することが求められるようになる。
もちろん、講義やセミナーを受けたり、動画を見たりすることも大切だ。
けれど、いくら泳ぎ方を学んでも、実際にプールに入らなければ泳げるようにはならない。
コーチングも同じなのだと思う。
実際にやってみる。
フィードバックを受ける。
そこからヒントを得て、またやってみる。
そうした試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ身体に染み込ませていくしかない。
そして、たいていの人は、どこかで壁にぶつかる。
大切なのは、その壁にどう向き合うかなのだと思う。
フィードバックを受けたときも、自分で「うまくいかなかった」と感じたときも、
「まだまだ伸びしろがある」
と捉えられれば、また次へ進むことができる。
けれど、「私はできる」という有能感が揺らいでくると、
「こんなに学ぶ必要があるのだろうか」
「どうしてこんなに上手にならないのだろう」
「やっぱり自分には向いていないのかもしれない」
と、思考がぐるぐる回り始める。
そして、「もうコーチングなんてやめた方が楽なのではないか」というところまで行き着いてしまうこともある。
そんな方々のお話を聴いていて、私には二つほど共通しているように感じることがあった。
一つは、コーチングには「正しい型」があり、そのとおりに進めることが大切だと思い過ぎていること。
型を意識し過ぎると、「次は何を質問しよう」と手順に意識が向き、目の前のクライアントの「今、ここ」から離れてしまう。
もう一つは、コーチングを「1対1のセッションの中で行うもの」と狭く捉えてしまっていること。
コーチング的な関わりは、日常の仕事でも、人との対話でも、マネジメントでも活かすことができる。
相手を尊重する。
相手の話を聴く。
すぐに答えを与えず、考えてもらう。
相手の可能性を信じる。
そんな関わりが周囲に与える影響は、決して小さくない。
けれど、その価値にまだ気づいていないと、「何のためにコーチングを学んでいるのか」「誰のために活かしたいのか」が見えなくなり、
いつの間にか「資格を取ること」だけが目的になってしまう。
それでは、確かに苦しくなる。
だから、そんな時こそ、私は「コーチングを受けようよ」と思う。
なぜ、自分は型に捉われているのだろう。
そもそも、自分はコーチングを通じて何をしたいのだろう。
これまで、コーチングを学んだことで、周囲にどんな貢献ができてきただろう。
そんなことを誰かに話しながら、もう一度、自分自身に問い直してみる。
それだけでも、見えてくる景色は少し変わるかもしれない。
壁にぶつかったからといって、そこで撤退しなくてもいい。
正面から越えられなければ、横から回ってみる。
違う方法を試してみる。
そして、また実践してみる。
そうやって近づいてみたら、あれほど高く見えていた壁が、実は思っていたより薄かった――なんてこともあるかもしれない。
学びの途中にある壁を、「できない証拠」ではなく「次の伸びしろ」として楽しめたらいい。
そんなことを、最近のお話を聴きながら感じている。
