権限委譲は、任せて終わりではない

空気は澄み、日中はまだ暑さを感じることもあるが、爽やかな秋晴れの日々が続いている。

街道には落ち葉が重なり合い、秋はゆるやかに深まりつつある。

 

今日は、権限委譲について考えてみたい。

中小企業に関わっていると、人材育成におけるさまざまな壁にぶつかる。

 

決まった手順に沿って進める仕事が多い会社では、実務知識がマニュアルなどによって形式知化されていることも多い。

しかし、それが常に更新され、関係者がいつでも共有できる仕組みまで整っているかというと、十分ではないことも多々ある。

まして、抽象度の高い仕事のノウハウを教えるとなると、その難易度はさらに上がる。

 

もう一つの壁が、権限委譲だ。

権限委譲とは、主に役職者が持っている権限の一部、あるいは全部を部下に委ねていくことだ。

単に仕事を任せるだけではない。判断や意思決定を伴う仕事を任せていくことであり、そこには暗黙知となっている判断の軸や考え方を伝えていくことも含まれる。

これが難しいのは、判断や意思決定には、経営方針との整合性はもちろん、倫理観や公平性なども求められるにもかかわらず、

その判断の軸が意外に言語化されていないことだ。

 

それを、まだ経験の浅い人に、個別にサポートしながら身につけてもらうことが、権限委譲には必要とされる。

一朝一夕にできることではない。

時間をかけながら、自分の持つ権限を意図的に渡していき、相手が自ら判断できるように支援していく必要があるのだ。

まず、マネジメントを担う人は、権限委譲を進めていくという意識を持って、日頃の業務に向き合うことが大切なのだと思う。

 

先日も、「地位が人をつくる」ということを信じて、ある人を部門長に任じ、権限を委譲したものの、

実際には社長の期待に十分応えられていないという事例に遭遇した。

もちろん、任された立場になれば、自力で成長し、期待に応えてくれる部下もいるだろう。

しかし、そうではない場合には、トップ自らが、相手への関わり方を見直す必要があったのではないだろうか。

 

権限を渡したからといって、相手がすぐに判断できるようになるわけではない。

どこまで任せ、何を期待しているのか。

判断に迷ったとき、どのような支援をしているのか。

そして、任せた相手が自ら考え、判断できるような関わりができているのか。

社長自身が、自分の行動や言動が、権限委譲した相手にどのような影響を与えているのかを自問し、必要に応じて修正していく。

そんなあり方が求められているのだと、強く感じた。

 

そして、その自己認識と行動の変化を支援できるのが、エグゼクティブコーチなのだと思う。

人が育たないことを、任された側だけの問題にしない。

任せる側も、自らの関わり方を見つめ直す。

組織と人の可能性を広げるために、私自身がやるべきことを、これからも丁寧にやっていきたい。

シェアする